登山に行くときに慎重に肌着・下着を選んでいますか?
インナーウェア(肌着・下着)は登山を安全・快適にできるかどうかを左右する重要なアイテムの1つです。
なぜなら、普段と同じ感覚でインナーウェア(肌着・下着)を選んでしまうと、汗で濡れた肌着が乾かず身体を冷やしてしまったり、動きにくくなったり、不快な登山となってしまうからです。
特に汗のかく量が多くなる夏の季節の登山では、インナーウェア(肌着・下着)の選び方次第で、より快適、より安全に登山を楽しむことができます。
■そもそもインナーウェア(肌着・下着)とは?
レイヤーとは「層」を意味します。ベースレイヤー(=インナーウェア(肌着・下着)=アンダーウェア)とは、服装の中でも一番内側に位置する層、すなわち肌着や下着の事を指しています。
■登山の服装の基本「レイヤリング」
『レイヤリング』とは簡単に言うと、各々のレイヤーに役割を持たせた「重ね着」のことです。登山の服装は内側から、
- ベースレイヤー(インナーウェア) = 肌着・下着
- ミドルレイヤー = 中間着
- アウターレイヤー = アウターウェア
- 身体表面の水分(汗)を吸い上げ・発散させ
- 身体表面の熱を逃がさず
- 外部の冷気を遮断してくれて
- 雨・雪・風などのあらゆる気象条件から内側を快適に保つ
■ベースレイヤー(インナーウェア)の役割とは?
ドライレイヤーとは、水をはじく撥水加工された繊維を網目状に織ったTシャツやノースリーブタイプの肌着です。(※ちなみに『ドライレイヤー』とは、ファイントラック社の登録商標です。)
撥水加工をしているため、汗をしみこまず、はじくことで体の表面の汗をすばやく外側のベースレイヤに渡すような役割をします。汗を受け取ったベースレイヤーは汗を吸収し、さらに外側に逃がす働きをします。ドライレイヤーが存在することで、汗をかいても衣服のベタつき感が大幅になくなり、動きやすく、快適になるという効果が得られます。


■ベースレイヤー(インナーウェア)の選び方
①製品の素材(繊維)に着目する。
綿(コットン)で作られた製品、綿(コットン)の割合が多い製品は避けるようにします。
理由は、綿(コットン)は肌触りは良いが、水分を保水しやすく乾きにくい点が登山においてはデメリットになってしまうためです。
そのため、製品の素材(繊維)は化学繊維であるポリエステル、ポリウレタン、または、天然繊維のメリノウールが使われている製品を選びます。ここは、登山用品メーカーのベースレイヤーを選択していれば、素材に間違いはありません。
化学繊維(ポリエステルやポリウレタン)と天然繊維(メリノウール)の違いは、よく言われるのは以下のような点です。個人の好みで選ぶとよいでしょう。
化学繊維 (ポリエステルやポリウレタン等) | ・速乾性が高い ・比較的リーズナブルな製品が多い ・防臭効果はあるが、メリノウールには劣ると言われている |
天然繊維 (メリノウール) | ・保温性がある、 ・濡れていても冷たさが感じにくい ・防臭効果が高い ・価格が化学繊維より高めの傾向がある |
②サイズは自分の身体にフィットするものを選ぶ
自分の体のサイズにジャストフィットするものを選びます。
ベースレイヤー(インナーウェア)は肌表面から出た汗を吸収する役割があります。自分の体よりも大きなサイズのウェアでは肌とウェアの間に余分な空間ができ、汗を十分に吸収する効果が得られなくなってしまいます。
逆に、自分の体よりも小さなサイズのウェアでは締め付けられ動きにくくなってしまいます。製品についているS、M、Lの表記では選ばず、自分の体のチェストや腰回りをメジャーで計った数値を基準に選ぶことをおすすめします。
特に、海外メーカーの場合は、製造国の基準でS、M、Lの大きさが決められているため、日本人のサイズ感覚とは違う場合があります。なので、S、M、Lの表記だけを頼りに選ぶのではなく、自分の体の実測値を基準にサイズを選ぶようにします。
③生地の厚さ
登山用のベースレイヤー(インナーウェア)は、薄手、中厚手、厚手 と生地の厚さが異なる製品があります。モンベルでは、薄手の生地の製品を、L.W(Light Weight)=軽量 と表記しています。これは、生地が薄いと製品の重量が軽く仕上がるためです。
夏の登山では、寒がりでなければ、薄手タイプのインナーがおすすめです。薄手タイプの生地の厚さは、日光にかざすと光が透けて見える程度の薄さです。これくらいだと、ちょっとしたそよ風でも空気が通るくらいのイメージです。
↓モンベルの薄手(L.W(Light Weight))の製品の透け具合。薄手な様子がわかります。
夏の登山だけではなく、春・夏・秋・冬のオールシーズンで使いたい場合もあると思いますが、その場合は生地は中厚手がいいかな、と思っています。ちなみに、厚手は厳冬期の登山向けなので、夏用の登山には向かないと考えています。
④半袖か長袖か
半袖タイプか長袖タイプかも迷うポイントです。
腕の日焼けを防止したい場合、冷え性の人、腕・肘が冷えると調子の悪くなる人は長袖タイプがおすすめです。
生地の厚さが一番薄手のタイプは風をとても通すので、長袖でも暑さはほとんど気になりません。長袖タイプのインナーには他にもメリットがあるため、迷う場合は長袖がおすすめです。長袖タイプのメリットについてはこちらで詳しく解説しています。
逆に、日焼けは気にならず、暑がりで筋肉質タイプの人は、半袖タイプがおすすめです。
■おすすめのインナーウェア(ベースレイヤー)
【モンベル(mont-bell)】 ジオラインシリーズ
日本のメーカーであり堅実な製品としておすすめなのが「モンベル(mont-bell)」のジオラインシリーズです。日本特有のじめじめした気候に対応するように繊維から独自に開発しているメーカーです。夏の登山としては、L.W.=ライトウェイト(薄手)をおすすめします。
【半袖】ジオライン L.W. Tシャツ Men's
薄手で速乾性に優れた素材を使用しています。伸縮性にも優れています。夏の登山も含めたオールシーズン活躍する汎用性の高い半袖モデルです。
【平均重量】100g
【カラー】ブラック(BK)、ライトシルバー(LTSV)
【サイズ】XS、S、M、L、XL

【半袖】ジオライン L.W. VネックTシャツ Men's
薄手で速乾性に優れた素材を使用しています。伸縮性にも優れています。Vネックなのでシャツなどの下にも着用しやすくなっています。カラーがホワイトなので、夏の通勤時のYシャツのインナーウェアとしてもおすすめです。
【カラー】ホワイト(WT)
【サイズ】S、M、L、XL

【長袖】ジオライン L.W. ラウンドネックシャツ Men's
薄手で速乾性に優れた素材を使用しています。伸縮性にも優れています。
【素材】ジオライン(ポリエステル)100% 化学繊維
【平均重量】125g
【カラー】ブラック(BK)、インディゴ(IND)、ライトシルバー(LTSV)
【サイズ】XS、S、M、L、XL

【半袖】スーパーメリノウール L.W. Tシャツ Men's
薄手ながら高い保温性を実現したTシャツです。薄手なため、レイヤリングしやすいボリューム感です。伸縮性にも優れています。メリノウールの繊維の特徴で汗冷えを感じにくい。天然素材ならではの防臭性が期待できます。
【素材】ウール92%+ナイロン8% (天然素材+化学繊維)
【平均重量】105g
【カラー】ブラック(BK)、シルバー(SV)
【サイズ】XS、S、M、L、XL
【長袖】スーパーメリノウール L.W. ラウンドネックシャツ Men's
薄手ながら高い保温性を実現したTシャツです。薄手なため、レイヤリングしやすいボリューム感です。伸縮性にも優れています。メリノウールの繊維の特徴で汗冷えを感じにくい。天然素材ならではの防臭性が期待できます。
【素材】ウール92%+ナイロン8%
【平均重量】130g
【カラー】ブラック(BK)、シルバー(SV)
【サイズ】XS、S、M、L、XL
【ファイントラック(finetrack)】
ファイントラック(finetrack)も日本のメーカーです。ファイントラックもモンベルと同様に繊維から独自に開発しているメーカーです。モンベルと比較すると、より特別なシチュエーションに対応した製品開発をしている印象です。
ファイントラックからは豊富なバリエーションのベースレイヤーが開発・販売されています。たとえば、岩登り登山や厳冬期の登山を想定したタイプ、汗を大量にかくトレイルランニングや自転車競技を想定した製品などです。
ただ、登山初心者におすすめしたいのは特殊な用途に特化した製品ではなく、オールラウンドタイプで比較的どのような季節、シチュエーションであってもバランス良く対応してくれるベースレイヤーです。
そこで、ここでは、ファイントラックのベースレイヤー(L2)のおすすめ製品2つを紹介します。
【半袖】ドラウトクアッド
「ドラウトクアッド」は生地の厚みが「やや薄手」で、春~夏~秋向けのオールラウンドタイプのベースレイヤーです。半永久的に持続する吸汗性が特長で、幅広いアクティビティ、様々なシチュエーションにバランスよく対応できる設計になっています。
【長袖】ドラウトクアッド
長袖タイプもあります。
【半袖】ネオリーフ
「ネオリーフ」は、しっとりと柔らかな新素地を使用することで、肌触りと汗処理対策を両立させたベースレイヤーです。
【長袖】ネオリーフ
「ネオリーフ」にも長袖タイプもあります。
■おすすめの夏向けのインナーウェア(ドライレイヤー)
【ファイントラック(finetrack)】 ドライレイヤーベーシックシリーズ
ファイントラック(finetrack)も日本のメーカーです。ファイントラックもモンベルと同様に繊維から独自に開発しているメーカーです。モンベルと比較すると、より特別なシチュエーションに対応した製品開発をしている印象です。
【半袖】ドライレイヤーベーシック T
高度な紡糸、および延伸技術により作られたポリエステルに、特殊な撥水処理と汗の濡れ戻りを低減する編みの工夫を加えた、汗が通過しやすく、濡れ戻りしにくい非常に薄い耐久撥水素材のドライレイヤーです。ドライレイヤーは、COOL、BASIC、WARMと3シリーズがありますが(※2020年からシリーズ展開が変更になりました。)夏の登山に向いた作りとなっているのはオールラウンドに設計されたBASICか、さらに涼しさを追求したCOOLです。ただし、COOLはトレイルランニングなどの登山よりもさらに汗を常時かくようなアクティビティ向けです。WARMは保温性が必要な厳冬期向きの作りです。
登山の初心者には、ドライレイヤーをはじめて試す場合には、オールラウンドに設計されたBASICがおすすめです。
【素材】ポリエステル100%
【重量】46g
【カラー】ブラック(BK)、ペイルグレー(PA)、オリーブドラブ(OD)
【サイズ】S、M、L、XL、XXL
【ミレー(Millet)]】 ドライナミックシリーズ
ミレー(Millet)は、フランス発祥の老舗のアウトドアブランドです。特に登山バックパックに定評があり、世界で初めて化学繊維であるナイロンを使ったバックパックを製造するなど、常に新しい素材や技術を活用した製品創りをしている印象です。
ミレー(Millet)について詳しく知りたい場合はコチラをご覧ください。

ドライナミックは、ファイントラックのドライレイヤーと同じく、ベースレイヤーの下(内側)に着用し、肌から汗を引き離して外側の吸汗性のあるベースレイヤーに汗を移行させることを目的としています。
【半袖】ドライナミック メッシュ ショートスリーブ
【素材】ポリプロピレン66%, ナイロン28%, ポリウレタン6%
【重量】110g
【カラー】BLACK - NOIR(黒)、LIGHT GREY(ライトグレー)
【サイズ】EU S/M、EU L/XL、EU XXL
■まとめ
- 夏の登山には素肌に直接触れるインナーウェアは慎重に選ぶ必要があります。
- ベースレイヤー(インナーウェア)を慎重に選ぶことで、より快適に、より安全に登山を楽しむことができます。
- レイヤリング(重ね着)の基本では、素肌に触れる一番内側はベースレイヤーと言われます。
- さらに内側にドライレイヤー(ミレーの場合はドライナミック)という汗を肌から分離するレイヤーもあります。