富士山に登るルートは大きく4つのルートが存在します。
その中で一番人気のある上位2つのルートが、吉田ルートと富士宮ルートです。
今回は、吉田ルートと富士宮ルートで富士山に実際に登ってみた感想も踏まえ、双方のルートを比較して、どちらの登山ルートがおすすめか解説していきます。
この記事を読めば、はじめての富士山の登山を吉田ルートで登るか、富士宮ルートで登るのか、納得の行く判断ができるはずです。
吉田ルートと富士宮ルートの違い
比較項目 | 吉田ルート (Yoshida Route) | 富士宮ルート (Fujinomiya Route) |
---|---|---|
所在県 | 山梨県 | 静岡県 |
五合目の標高 | 約2,305m | 約2,380m |
剣ヶ峰(最高点)までの標高差 | 約1,470m | 約1,360m |
総合的な移動距離(往復) | 約14km (登り7km+下り7km) | 約8.5km (登り4.25km+下り4.25km) |
剣ヶ峰までの距離 | 約8.5km | 約5.0km |
平均所要時間(登り) | 約6〜7時間 | 約4〜5時間 |
平均所要時間(下り) | 約3〜4時間 | 約2〜3時間 |
山小屋の数 | 約15軒 (七合目~九合目に集中) | 約6軒 (七合目~九合五勺に集中) |
素泊まり価格帯 | 6,000円~10,500円 | 6,000円~10,000円 |
1泊2食付価格帯 | 11,000円~14,000円 個室含むと15,500円~16,500円 | 約9,000円~13,000円 (部屋・時期で変動) |
個室ありの小屋価格例 | 「蓬莱館」平日15,500円~/人など | 「新七合目御来光山荘」1人室9,000円~ |
繁忙期 | 金曜・土曜+1000~1500円ほど増加 | 繁忙時期は+2,000円(元祖七合目) |
トイレの数 (五合目以降) | 多い (山小屋ごとにあり) | 少なめ (山小屋ごとにあり) |
登山者数 (例:2023年) | 約17万人 (過去最多) | 約5万人 |
登山道と下山道 | 別ルートになっている 六合目より上では登山者と下山者のすれ違いなし | 登山道と下山道が常に同じ、登山者と下山者のすれ違いあり |
登山道の混雑状況 | 非常に混雑 (特に週末・御来光前) | 比較的空いている |
御来光の見やすさ | 非常に良い(東向き) | やや見えにくい(南西向き) |
ご来光目的の人気度 | 圧倒的に高い | 比較的少ない |
山頂のお鉢巡りのしやすさ | 比較的距離があるが可能 | 最も山頂に近いためしやすい |
海が見えるか | 見えない | 見える、駿河湾を見渡すことができる |
宝永山火口の見学 | ルート的に不可能 | 可能 六合目から「宝永山遊歩道」経由で第一火口縁まで徒歩約10分 |
アクセスのしやすさ | 新宿から直通バスあり | 都内からの直通バスはなし、静岡・富士宮方面からアクセス可能 |
五合目の施設 | 飲食店・売店・土産店・トイレなど充実 | 吉田口より簡素、飲食店はなし、売店は小規模 |
登山シーズン中のマイカー規制 | あり(規制中はシャトルバス) | あり(規制中はシャトルバス) |
富士登山オフィシャルサイトの環境保全協力金(任意) | 1,000円(任意) | 1,000円(任意) |
入山料[2025年] | 4,000円/人(必須) | 4,000円/人(必須) |
1日あたりの登山者数の上限規制 | あり、1日4000人を超えた場合ゲート閉鎖 | なし |
登山者のe-ラーニング | なし | あり、入山前に必ず実施 |
吉田ルート・富士宮ルートのどちらがおすすめか?
はじめて富士山に登るのであれば、個人的には「吉田ルート」をおすすめします。
理由は、人も多く賑やかな雰囲気なので、日本一の世界遺産でもある富士山に登っている雰囲気が楽しめるからです。さらに、登山道の山小屋の数が多いので、不測の事態にも対応しやすいというのもあります。たとえば、飲料水が足りなくなったり、急にトイレに行きたくなったりなどに対応がしやすいと思います。
逆に、静かな登山を好む場合には「富士宮ルート」の方が良いかもしれません。富士宮ルートの方が登山客が基本少ないため、騒がしい雰囲気に遭遇する機会がだんぜん少ないからです。実際、富士宮ルートで登った際は、吉田ルートよりも人が少ない感じがしました。
登山の登りやすさ、しんどさ、に関してはどちらのルートも変わらず「しんどい」です。
ただ、富士宮ルートの方がやや高い標高からスタートでき、総合的な歩行距離が短く、さらに、富士山の最高峰である「剣ヶ峰」までの距離も近いです。
下記のグラフは横軸が歩行距離、縦軸が標高で、青線=吉田ルート、赤線=富士宮ルートになっています。これを見ると、富士宮ルートの方が登山開始の標高が高く、さらに歩行距離が少ない割に吉田ルートと同じ標高まで到達していることがわかります。
つまり、全体的に富士宮ルートの方が急登で、吉田ルートの方がなだらか、ということになります。

そのため、脚力がある場合はどんどん高度を上げられる「富士宮ルート」の方が「楽」と感じるかもしれません。反対に、そこまで脚力がない場合はなだらかな「吉田ルート」の方が登りやすいかもしれません。
ただ、両方登ってみた感覚で言うと、吉田ルートにも急な岩場は出てきますし、富士宮ルートでもゆるやかな登り斜面のところもあるので、体感的にはそこまでの違いは実感できませんでした。
吉田ルートの様子
吉田ルートに向かうシャトルバスが発着する山麓駐車場からの富士山。

吉田ルート五合目の登山口。飲食店、お土産屋さんなどがいくつもあり充実している。神社もあり登山前の安全祈願に立ち寄る登山者も多い。登山者以外にも五合目付近を観光する観光客も見受けられる。
お馬さんがいて乗馬体験もできる。お馬さん達は最後の最後歩けなくなってしまった登山者を運ぶときにも活躍する。



吉田ルート六合目付近の登山道。

吉田ルート七合目、最初の山小屋である「花小屋」付近の急な岩場。この辺りから、急な岩場がところどころに出てくる。


吉田ルート七合目~八合目付近の登山道。


吉田ルート八合目鳥居荘、標高2,900m付近の登山道。


吉田ルート、本八合目付近の登山道。本八合目より上は富士山本宮浅間大社奥宮の境内地となります。このあたりは、うっすらとロープがジグザグに張ってあるように見えるところが登山道になっています。

吉田ルート九合目付近の御来光渋滞です。吉田ルートでは山頂で御来光を見たいと願う登山者が日の出前に一斉に山頂を目指すため、登山道が人で埋まり渋滞してしまうことがあります。

吉田ルートは六合目から上は登山道と下山道が区別され一方通行となるため、登山者と下山者のすれ違いがない。下山道ルートには岩場はなく、砂場が延々と続く。


富士宮ルートの登山の様子
富士宮ルート五合目に向かうシャトルバスが発着する水ヶ塚公園駐車場からの富士山。

富士宮ルート五合目の休憩施設。吉田ルートと比べると簡素ではあるが、売店、お土産、休憩スペース、トイレ、コインロッカーなどひと通りの設備は整っています。

飲食店はありませんが、カップラーメンにお湯を入れてくれるサービスがあり、その場で食べることができます。食べたあとの残ったスープとゴミを引き取ってもらえます。値段は\400円。


富士宮ルートの六合目にある山小屋「雲海荘」。すぐお隣に「永山荘」もあります。
「雲海荘」までの登山道はあまり急な箇所はなく歩きやすい道のりです。

六合目の雲海荘・永山荘を過ぎると、登りが急になる印象です。

富士宮ルート新七合目~元祖七合目付近の登山道の様子。

富士宮ルート新七合目~元祖七合目付近の登山道の様子。

富士宮ルート元祖七合目の手前付近の登山道の様子。

富士宮ルート元祖七合目の山小屋「山口山荘」、標高3,000m付近。

富士宮ルートの登山道からは駿河湾が一望できる。

富士宮ルート八合目~九合目、標高3,300m付近。
